不動産界隈でウッドショックという言葉がよく聞かれるようになりました。
今回はこのウッドショックとはどういったものなのか?なぜ起きたのか?
それによって不動産投資家にはどのような影響が生じてくるのかということについて解説をしてみたいと思います。
ウッドショックとは
元々2020年以降、世界的に木材の価格が高騰していたのですが、
2021年3月頃から住宅の基礎となる柱や梁(はり)、土台に使う木材の需要が膨らみすぎて木材不足になってしまい、木材の価格が高騰し混乱が生じています。
これをオイルショックになぞらえて名付けられたのがウッドショックです。
ウッドショックが起きた原因
ウッドショックは日本だけの問題ではありません。
実は日本の住宅メーカーが使っている木材の7割は輸入材となっています。
戦時中の森林の伐採や戦後に住宅需要が膨らんだことにより国内の木材は減少しました。
そして木材は植林をしてから市場に出るまで30年以上の長い時間がかかるため、ほとんどが海外から輸入するという形になっているのです。
そもそも林業従事者が減少しており国内の林業が衰退しているという背景もあります。
そのような状況下で新型コロナウイルスの感染が拡大しウッドショックが起きました。
元々カナダで害虫被害が発生していたという状況もあったのですが、コロナ禍において労働者が減り製材工場の稼働率が下がってしまったという背景がありました。
またアメリカや中国ではコロナ禍において、住宅ローンの低金利政策などが行われており、通常よりもかなり安く住宅を購入することができるようになり、郊外に新しい住宅を購入するという動きが加速しました。
経済産業省の資料には2021年1月のアメリカの住宅建築許可指数は前年同時期に比べて約30ポイント以上上昇しているというデータがありました。
日本でも都心から離れた地方都市に移住をするという人が一時的に増えた時期がありましたよね。
こういった動きにより需給バランスが大きく崩れ、輸入していた木材も日本に入ってこなくなってしまった、というのがウッドショックが起きた原因です。
またコロナ禍においてネットショッピングなどの利用が増え世界的に流通が圧迫されコンテナ不足が起きているというのもウッドショックを加速させた原因の一つと言われています。
日本では輸入材が不足することで国産材を代用していましたが、今度は国産材も不足しているという状況になってきています。
日本の住宅市場への影響
国土交通省の「中小工務店における木材の供給遅延の影響について」という調査によると2021年6月末時点で木材の供給遅延が生じていると回答した工務店は全体の94%となっています。
木材の供給が遅延していると回答した工務店の家の35%が「木材の供給遅延により、ここ一か月の間に新規契約の締結を見送った」と回答。
また34%が「資金繰りが新たに厳しくなっている」と回答しています。
ウッドショックによる新築一戸建て住宅販売業への影響はかなり深刻だと言えるでしょう。
ただ、2021年9月現在、アメリカでの木材価格の暴騰は徐々に沈静化しており、ウッドショック前の水準までは戻ってはいないものの木材バブルは終焉を終えたと見てよいでしょう。
今のところ対日向けの木材価格はまだ値上げを続けている状態ではありますが。
アメリカで起きている現象が少しずつゆっくりと日本に波及し影響を与えてくることを考えると、日本国内では2021年いっぱいは様子を見た方が良さそうな流れではあります。
木造建物の建築原価に占める木材の割合は平時で約10%程度となりますので、木材の価格が安定しないうちには利益率にも影響が出てくるでしょう。
また新規発注は期日には納品されないのが現状です。建設会社各社は値上げをするところも増えてきています。
不動産投資にどのような影響がある?
不動産投資業界で影響が出てくるとすると
- 建築費の上昇
- 納期の遅れ
の2点でしょう。
アパートなどを新築しようと考えた場合建築コストが上がっているので投資家の資金計画は狂ってしまいます。
また工期が遅れることによって通常入居が見込めるはずの時期に入居を開始することができず、想定していたスケジュールで収益を上げることができないというような状況が考えられます。
ローンの返済が始まっても建物が完成しないので家賃収入も得られないという状態が長く続く可能性があるのです。
住宅用の不動産のみの話のように聞こえますが不動産投資を行なっている方にも少なからず影響がある部分ですので、今後の動向にも注目したいところです。
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