売買知識

原状回復費用は原則オーナー負担だけど、カビが生えてる場合は?

地方の築古アパートを中心に、戸建てや区分マンションにも投資をしています。

不動産投資歴は10年を超えました。

不動産投資をしているとよくトラブルになるのが、退去時の原状回復です。

10年以上投資をしていると、まぁいろいろありました。

ペット禁止の物件なのに入居者が内緒で猫を飼っていて、退去時にお部屋を確認したら柱がガリガリになっていた、とか

つい最近は、家賃滞納が続いていて、警察立会いのもとお部屋に入ってみたらゴミ屋敷になっていた、という案件が立て続けに2件起こっており、現在裁判の準備中です。

【実録】家賃滞納8ヶ月!連絡取れないので安否確認のため警察立会いで入室… 随分と過激なタイトルになってしまいましたが、タイトルそのままのことが起こってしまいました。 管理会社の方から 管理...

とっても綺麗にお部屋を使ってくれる方もいらっしゃいますが、こればかりは本当に個人によるので、お部屋に入ってみてびっくりということは多々ありますね。

退去時に壁に穴が空いていたこともあります
貫通して隣のお部屋が見えてる…

そんな中で、今回は「カビの発生」について。

退去時にお部屋の一角に信じられないくらいカビが広がっていることがあります。

こういった場合は原状回復費用は入居者負担とすることはできるのでしょうか?

原状回復に関する一般的な考え

原状回復の考え方については、国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にします。

原状回復とは、借主(賃借人)が退去する際に、借りたお部屋を「本来あるべき状態」つまり入居時の状態に戻して貸主(賃貸人)に返す義務のことです。

ただ、住んでいれば自然とできる汚れや傷、色褪せなどもありますよね。

こうした線引きがあいまいなために、かつては退去時に敷金の返還をめぐるトラブルが多くありました。

そこで1988年に国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表したのです。

この「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復が以下のように定義されています。

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

つまり、普通に住んでいて自然にできてしまう損傷(通常損耗)は、入居者の責任ではない、ということです。

さらに2020年4月1日に原状回復にまつわる民放が改正されました。

この時「入居者側の落ち度がない部分の修復については、原状回復義務を負う必要はない」ということが新たに明文化されました。

【改正民法621条】(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

ただしこれは、逆を言えば、入居者に落ち度がある場合は原状回復費用を入居者負担として良い、ということになります。

この場合は業界用語で言うと「善管注意義務違反」ということになります。

関連記事:敷金精算時に知っておきたい「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

カビの発生、負担は入居者とオーナーのどちら?

賃貸物件のカビについて、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、

結露を放置したことにより拡大したカビは通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い

とされています。

つまり、一般的なカビ対策をきちんと入居者が行わなかったことによってカビが発生した場合は善管注意義務違反とみなされ、入居者側の負担ということになります。

  • 結露の放置
  • 換気や清掃が不十分

といった原因が入居者にあれば入居者負担とできます。

ただ、建物の構造上の問題でカビが発生した場合は、オーナーが負担することになります。

例えば断熱性の低い窓を採用している物件など、カビが生えやすい、どの入居者の退去の場合でもカビが発生している、といった場合はオーナー側の負担、という感じですね。

最近流行りのコンクリート打ちっぱなしの物件も吸収性に欠けているため、カビが生えやすいようです。

関連記事:原状回復のチェックリスト!退去時は何を見るのか

善管注意義務違反の具体例

カビの発生に限らず、入居者の故意・過失によるお部屋の損耗は、入居者に原状回復費用の負担をお願いすることができます。

  • カーペット等に飲み物をこぼした事によるシミやカビ(飲み物をこぼすなどは日常生活の範囲だが、その後の清掃を怠った事により生じたシミやカビ)
  • 風呂、トイレ、洗面台等の水垢やカビ(手入れや清掃をおこあった事で汚染が生じた場合)
  • 結露による壁やサッシのカビ(賃貸人に通知せず、拭き取るなどの手入れを怠り、壁などを腐食させた場合)

ちなみに善管注意義務とあわせて報告義務というものも入居者には課せられます。

部屋を借りていて、何かしらの不具合があった場合、報告をしなくてはいけないという義務です。

この報告がないまま放置をすることもカビの大量発生に繋がりますので、義務違反を問うことができます。

関連記事:入居者退去時のエアコンの原状回復について

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