売買知識

空室対策に使える?住宅セーフティネット制度とは?

不動産経営をしていると、多くのオーナーが空室に悩むと思います。

空室対策にもいろいろなものがありますが、その中でもオーナーが知っておきたい制度として住宅セーフティネットという制度があります。

この制度を利用することで、入居者の斡旋や、賃貸住宅の改修工事費の経済的支援など、オーナーにもメリットがあります。

今回はこの住宅セーフティネット制度とはどんな制度なのか、ということを解説しつつ、それを利用した空室対策についてもお話ししていきたいと思います。

住宅セーフティネット制度とは

住宅セーフティネット制度とは、住宅の確保に配慮が必要な

  • 低所得者
  • 高齢者
  • 被災者
  • 障害者
  • 子育て世代
  • 外国人

などの住宅確保要配慮者と呼ばれる方達がきちんと住宅に住めるように支援をする制度です。

正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」というもので、実はこの住宅セーフティネット法は2007年7月に制定され、そこから支援は始まっています。

公営住宅の供給や、住宅確保要配慮者と大家の双方に住宅情報提供などの支援をする居住支援協議会の設置も行なっていたのですが、公営住宅の増加が難しかったり、民間の空き家が増加している現状、さらには住宅確保要配慮者が増加する見込みであることから、2017年10月25日より改正住宅セーフティネット法が施行されました。

この内容はぜひ、賃貸経営を行うオーナーも知っておきたい内容なのです。

関連記事:空室の多い物件は本当に買っちゃだめなのか

新しい住宅セーフティネット制度の改正ポイント

新しい住宅セーフティネット制度は以下の3つが大きな変更ポイントです。

  1. 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
  2. 登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
  3. 住宅確保要配慮者に対する居住支援

オーナーに関係してくるのは①、②のポイントですね。

住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度

一定の条件はあるのですが、その条件をクリアしていれば、オーナーが登録を行うことで、国土交通省が管理する「セーフティネット住宅情報提供システム」に掲載されます。

この制度に登録された住宅は住宅確保要配慮者の入居を拒まない物件として「登録住宅」と呼ばれるようになります。

もちろん登録住宅には要配慮者以外の入居も可能です。

ちなみに要配慮者専用となる物件は「専用住宅」として登録されます。

専用住宅として登録すると、要配慮者の入居を拒むことはできませんが、補助金や経済的支援も手厚くなっています。

集合住宅の場合は住戸単位での登録も可能ですので、空室が出ている部屋のみの登録、ということもできます。

登録基準としては以下のような条件があります。

一般住宅共同居住型住宅(シェアハウス)
・耐震性を有すること
・住戸の床面積が25㎡以上(台所などが共用の場合は18㎡以上)
・耐震性を有すること
・専用居室が9㎡以上
・住宅全体の面積が15㎡×居住人数+10㎡以上
・台所、食事室、便所、浴室、洗面所等を適切に設けている
登録基準は地方公共団体により異なる場合があります。参照:国土交通省『大家さん向けハンドブック』

自治体によっては空き家と住宅確保要配慮者のマッチング支援を行なっているところもあるようです。

登録住宅の改修や入居者への経済的な支援

住宅セーフティネット制度に登録すると、登録した物件の修繕費などに対する経済的支援が行われます。

この経済的支援の内容は大きく分けて以下の4つとなっています。

経済的支援対象範囲詳細
改修工事の費用補助家賃低廉化の補助専用住宅専用住宅の改修費用に対する補助を受けることができる。
家賃低廉化(家賃下落)の補助専用住宅家賃の低廉化にかかる費用に対する補助を受けることができる。
家賃債務保証料の補助専用住宅専用住宅における初回の家賃債務保証料の低廉化にかかる費用に対して、補助を受けることができる。
改修工事費の融資登録住宅登録住宅の改修費用として、住宅金融支援機構から融資を受けることができる。

現状では住宅セーフティネット制度の登録条件を満たせていない物件でも、基準をクリアするための修繕や補修を行う計画があれば住宅の登録が認められており、登録後に補助金の申請を行って工事をすることができます。

関連記事:アパートの修繕費目安、項目ごとに知っておきたい予算

費用補助を受けるための要件

費用補助を受けて修繕を行う場合は、その修繕は住宅確保要配慮者に向けた取り組みに対するものでなくてはいけません。

例えば以下のような工事です。

  • 共同居住用住宅に用途変更するための工事
  • 間取りを変更するための工事
  • 耐震性向上のための改修工事
  • バリアフリーのための改修工事
  • 居住のために最低限必要である工事
  • 居住支援協議会等が必要と認める工事

さらに補助要件として「補助を受ける物件が、専用住宅としての管理期間が10円以上である」というものがあります

登録後最低10年間は管理・運用しなければなりません。

詳しい補助要件は以下の通りです。

・住宅確保要配慮者専用の住宅として登録されるもの

・登録専用住宅として10年以上登録するもの

・入居者の家賃の額が以下の額を超えないこと67,500円×50/65×市町村立地係数

・地方公共団体の空家等対策計画等(供給促進計画、地域住宅計画等において、空家を登録住宅 として有効活用する旨等が記載されていること

・居住支援協議会等が登録住宅の情報提供・あっせんを行う等、地方公共団体が居住支援協議会等と連携する取組を行っていること

国土交通省『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業について』

一度登録したら10年運用しなくてはいけないというのがネックにはなりますが、築古物件でどうしても空室が続いているなどの状況の場合は、選択肢の一つとして考え見ても良いかもしれません。

関連記事:賃貸物件の内見の印象を良くする!ウェルカムボードなどの空室対策

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