売買知識

不動産売買の引き渡し猶予とは?買主に大きなリスクがある

不動産の売買を行う時に、「引き渡し猶予」をお願いしたいと言われることがあります。

通常決済と同時に不動産の引き渡しは行われるものですが、決済の後に引き渡しまで猶予を設けるという意味です。

買主には大きなリスクがある引き渡し猶予。

たまに不動産売買でお願いされることがある事例なので、そのリスクについて解説してみたいと思います。

引き渡し猶予とは?

まずは通常の不動産売買の流れについて見てみましょう。

  • 不動産会社へ売主が不動産売却の相談をし、不動産会社と媒介契約を結ぶ
  • 買主が不動産業者に連絡をし、内見後、気に入れば売買契約を締結
  • 契約後(1週間〜2週間ほどあけて)引き渡しと決済を同日に行う

という流れが売買では一般的です。

売買契約を締結する時に買主は手付金と呼ばれる前金を支払います。

これが不動産価格の5%〜10%が相場となっており、

買主の都合でキャンセルした場合はこの手付金は買主へは返金されません。

売買契約が済んだあと、買主は決済時に残代金を支払い、売主から買主へ不動産の引き渡しが行われます。

通常は不動産仲介業者が立ち会って行われることです。

引き渡し猶予がある物件に関しては、

売買代金の決済が終わった後も売主が負っている引き渡し義務を猶予し、

売却したはずの不動産を引き渡すまでに時間を空けます。

通常同日に行われるはずの決済と引き渡しが、同日には行われないのが引き渡し猶予ありの不動産売買です。

関連記事:不動産売買契約、決済当日の流れ!実際に購入してみた

どんな時に引き渡し猶予がある不動産売買が発生するのか

引き渡し猶予のある不動産売買は、ほとんどの場合、売主が住居を住み替えのために売却するケースです。

住み替えで不動産を売却する場合は、新居を用意しないとお引っ越しができません。

住み替えで自宅を売却する場合は、

  • 先に今住んでいる家を売ってから新居の購入をする
  • 新居の購入をしてから今の家を売却する

という2つのパターンがあるのですが、

今の家を売ってから新居を購入する、という場合は、新居を購入するまでに住む家がなくなってしまいます。

また、現在住んでいる家で住宅ローンを組んでいて、新居を購入するにもまた住宅ローンを組む場合は、ローンを二重で利用することになるので、新居のローンの審査が厳しくなるんですね。

そのため、先に売却を行って住宅ローンを完済し、その後、組んでいるローンが亡くなった状態で新居を購入するための住宅ローンを新しく組んで、晴れて新居が購入できる、というパターンが少なからずあります。

新居を現金で購入できれば良いのですが、住み替えの場合は自宅を売却することを先に行う、というケースがあり、

その場合は引き渡し猶予を設定せざるを得なくなります。

関連記事:不動産の売買契約を結ぶときに必要なものは?

引き渡し猶予がある場合、契約はどのようにする?

引き渡し猶予を設ける時は、売買契約書にその旨を特約として記載します。

以下が引き渡し猶予特約の例文です。

買主は、売主に対して、本物件の引き渡しを売買代金支払い日の翌日から7日間猶予するものとする。

また、猶予期間中、売主は本物件の管理責任を負い、猶予期間中に天災地変等の不可抗力によって本物件の全部又は一部が滅失もしくは毀損したときは、その損失は売主負担とする。

なお、固定資産税等の負担は上記引渡日をもって区分し、その前日までの分を売主負担、引き渡し以降の分を買主負担とする。

引き渡し猶予中は、売買は住んでいるので、買主の所有している物件に売主が住むような形になり、形としては、賃貸借のような形になります。

ですが、そこで賃料は敢えて発生させず、賃貸借契約も結ばないことが多いです。

というのも、賃貸借契約はどうしても借主の立場を守るように作られているので、

賃貸借契約を結んでしまうと、借地借家法が適用され、借主の権利が強くなってしまうからです。

そのため、引き渡し猶予中は賃料は発生させず、無料で貸すことで、その占有は「使用貸借」というものに分類されることになります。

引き渡し猶予はあくまでも売主から貸主に対して、「無償で数日間泊まらせてください」というお願いになります。

賃貸借契約を結ばないことで、力関係的には買主の方が強くなるので、

いざとなれば買主は売主を簡単に退去させることができるというパワーバランスになるようにしています。

とはいえ、買主にとっては引き渡し猶予というのはデメリットの方が大きいですから、その分売却金額を減額する、といった対応があるのが実際のところです。

それを理由に指値をするのも良いでしょう。

関連記事:不動産の指値、目安は?根拠のある数字を提示しよう

引き渡し猶予のリスクは?

やはり買主にとっての最大のリスクは、猶予期間を過ぎても売主が退去をしてくれない可能性がある、ということでしょう。

売主が新居を購入するための住宅ローン審査が通らない、ということもあります。

また、引き渡し猶予期間中に当該物件が火災などで損傷したり、

設備が壊れてしまったり、売主が傷をつけてしまったり、といった可能性も考えられます。

引き渡し猶予があることで大幅な値下げが期待できるのであれば良いとは思いますが、

基本的にはトラブルが起きやすいと思いますので、引き渡し猶予ありの物件は避けた方がいいかなと思いますね。

関連記事:不動産の売買契約から引き渡しまでの期間は1ヶ月半後くらいが目安

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