財産の中でも不動産は現金に比べて評価額が低くなるので、相続対策で資産を不動産にしておく、という方は多いですよね。
ですが不動産は「こっからこっちはAさんのもので、こっからこっちはBさんのもの!」というような分け方はできません。
なので相続人が複数いる場合は、どのように分けるかというところでトラブルになることが多いです。
相続の時に「共有名義」にして不動産を相続することがありますが、それによってどんなトラブルが起こることが予測されるのか、解説してみたいと思います。
不動産を共有名義で所有するというのはどういうこと?
現金の場合は、例えば1,000万円を2人で平等に分けましょう、となれば500万円ずつもらえばいいですが、不動産ではそういった分け方はできません。
なので、所有権を分ける、という考え方をします。
親が亡くなって複数人で相続をする場合は、法定相続分をそのまま不動産の共有持分(所有権)とする、ということが多いです。
例えば4人家族(父、母、子2人)でお父さんが亡くなったケース。
相続の割合としては、母(故人から見ると妻)が2分の1で、子供には4分の1ずつの相続が発生しますね。
この場合は、不動産の所有権を50%母、25%ずつ2人の子供たち、という形で考えるわけです。
とは言っても、物理的に分けるわけではありませんので、あくまで机上の話というか、そういう権利として考える、という話ですね。
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共有名義では不動産の扱いに協議が必要になる
不動産を共有名義で相続する場合、売却したり賃貸に出したりといったことをする時に共有者1人だけの判断で進めることができません。
例えば、不動産を売却する場合や大規模なリフォーム・建て替えをする時、
共有者全員の同意が必要になります。
全員が同意しないと売却することができない、というので流動性が低くなるというのは大きなデメリットでしょう。
不動産を単独名義で持っていれば「現金が必要になったから売却したいな」と思ったら不動産を売却することができますが、
共有名義で所有していて売却することを反対する人がいれば、不動産として資産は持っていても現金にすることができないので、手元にキャッシュを生み出すということができません。それだと資産を持っていないのに感覚的には等しいと言えます。
共有者が多ければ多いほど、協議で一つの答えを導き出すのは難しくなるでしょう。
第三者に貸しに出す時は、過半数の同意が必要となっています。
これは持分の過半数になりますので、例えば3人兄弟で3分の1ずつの持ち分だったら、3人中2人が貸し出しに同意しなければ貸し出すことができない、ということですね。
ただしこれもあまり現実的ではないように思います。
1人が反対しているのにそのまま貸し出しを決める、というのはトラブルのもとでしょう。
面倒になってそのまま放置されるケースも
売却が簡単にできなかったり、何をするにも所有者間での協議が必要になるため、面倒になって結局そのまま放置されてしまう、というケースもあります。
冷静な話し合いができれば良いのですが、所有者間で不動産の扱いを決めていくというのは難しく、そもそも不動産のことについて詳しい人が一人もいない、ということがよくあります。
そんな中で複数人で不動産を扱っていかなくてはいけない。
億劫になってしまうのも仕方ないですよね。
単独で決められることは?
例えばクロスの張り替えや水道管の修理などの小さな修繕や。
無断で土地を使用している第三者への明け渡し請求などについては共有者全員の同意を得なくても単独で行うことができます。
とはいえ、屋根や外壁などの大規模修繕の場合はやはり共有者の同意が必ず必要になります。
相続の相続もまた複雑になる
例えば第一世代のみの相続ならまだマシですが、
さらに第二世代の相続が発生した場合。
共有者がまた増えることになります。
例えば兄弟3人で均等に不動産を分けたとして、一人あたりの持分は3分の1ということになります。
ですが長男が亡くなって、長男の配偶者と子供が半分ずつ相続する、となると、
長男と配偶者の持分は6分の1ずつ。
整理すると
- 長男の配偶者が6分の1
- 長男の子供が6分の1
- 次男が3分の1
- 三男が3分の1
というように、どんどん相続が複雑に、そして所有者が増えていく構図なのです。
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トラブルを起こさないためには?
なるべくトラブルが起きないようにするためには、
- 一人の人が不動産を相続するようにする
- 不動産を売却して現金にしてから分割する(換価分割)
- 不動産を相続した相続人が他の相続人に代償金を支払う(代償分割)
といった方法で、なるべく共有名義では所有しないようにすると良いかと思います。
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