不動産投資の基礎知識

無償で家を貸す使用貸借が招くトラブルとは?

お世話になった人や親・子、親族で所有している物件を無償で貸し出す、というケースもありますよね。

どうせ余っている家なら無償で貸してあげよう、ということもあると思います。

これは不動産業の専門用語で言うと、使用貸借(しようたいしゃく)というものにあたります。

通常、所有している土地や建物などの不動産を人に貸す時は、その対価として金銭の授受が発生するのが一般的ですが、

使用貸借ではその対価が発生せず、無償での貸し出しとなります。

一般的な不動産の賃貸とは異なるがゆえにトラブルが起こることも多くあります。

今回は使用貸借において起こり得るトラブルや注意事項について解説してみたいと思います。

使用貸借とは

ここで改めて使用貸借という言葉の意味も説明しておきたいと思います。

不動産を有償で貸し付ける契約が「賃貸借契約」であり、不動産オーナーが普段、所有している不動産を貸し出す時に入居者と交わす契約がこれですね。

それに対して無償で貸し付ける契約は「使用貸借契約」と呼ばれます。

賃貸借契約と使用貸借契約の大きな違いは借地借家法が適用されないということです。

その代わりに民放第593条から第600条が適用されます。

具体的に言うと、使用貸借契約においては貸主は原則としていつでも借主に対して契約を解除し物の返還を要求することができます。(ただし、存続期間を定めているときはその期間が満了するまで使用及び収益の目的を定めたときは借主がその目的に従い使用及び収益を終えるまでは物の返還を要求できない)(民法第597条・598条)

つまり、賃貸借契約と違って無償での貸し出しなので、

いつでも「出てって欲しい」と言える、ということですね。

通常の賃貸借契約では入居者である借主が守られるので、このように急に退去を命ずることはできません。

関連記事:分譲マンションを賃貸に出す時は何をやればいい?

契約書を作成しないでトラブルになるケースが多い

多くの場合、使用貸借の場合はお世話になった人や親族間での貸し借りが多いため、契約書を作成しないまま口約束で貸し借りがスタートすることが多いです。

貸し借りがスタートしたばかりの頃はそれでよくても、そこから10年20年と月日が経っていくことによって、誰が誰に貸していたのか、ということが次第に曖昧になっていきます。

中には貸したままにして不動産の持ち主が亡くなってしまう、というケースも。

そういった時に、「やっぱり貸していたものを返して欲しい」と貸主が借主に対して告げることは問題ありません。

先述したように、使用貸借であれば、「返して欲しい」と言って返還してもらうことが可能なはずなのです。

ところが、「借りている」という意識が曖昧になっている借主が返還を拒むケースがあり、

そのまま居座りを続けてトラブルに発展する、ということがよく起こります。

使用貸借で無償の貸し借りの場合でも、こういったトラブルを招かないために、きちんと契約書を作成する、ということが大切です。

契約書を交わす場合も、できれば「何年の契約とする」というような文言を入れておくと良いでしょう。

それを明記しておくことで返還が容易くなります。

期間が明記されていないと、立退をお願いしても立ち退いてもらえず、居座られてしまうということがどうしても起こりがちになります。

また、家族や親族などに使用貸借を周知するということも大事です。

いざというときのために、「誰々さんにあの不動産を無償で貸している」ということを家族全員が知っている状態にしておいた方が良いでしょう。

関連記事:入居者とのトラブルを防ぐためにオーナーがやるべきこと

親子間で行われる土地の使用貸借は贈与には当てはまらない

ちなみに親子間でよくお婚割れる使用貸借の例としては、親名義の土地に子供が家を建てるというケースです。

土地の賃料を取らずに子供に土地を無償で貸してあげるというパターンですね。

これは贈与になるのか、という話がありますが、親子間で行われる土地の使用貸借は贈与には当てはまりません。

使用貸借は借地権のような強い権利を持つものではないので、贈与にはならないのです。

ただここで注意をしたいのは、あくまで無償での土地の貸し借りという点です。

地代をはらったり、権利金を支払ったりすれば、賃貸借の扱いになりますので贈与税が課税されてしまいます。

地代の支払いは使用貸借の範囲から外れてしまうということなんですね。

ただし、土地の固定資産税を支払うというのは使用貸借の範囲になります。

タダで貸してもらうのは気が引ける、という場合は、土地の固定資産税を支払う、という形にすると良いでしょう。

もちろん親子間であっても、土地の貸し借りを行う場合は契約書を作成しておいた方が良いです。

自分たちの世代だけでなく、その後の世代のことも考えると、契約書は必須でしょう。

関連記事:不動産投資をする時に知っておきたい固定資産税の話

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