賃貸物件において、物件の条件を「ペット不可」としていたのに、入居者が勝手にペットを飼っていた、というケースが少なからずあります。
ペットを飼っていたことによってクロスの傷みが激しかったり、フローリングがの傷が目立つ、などで原状回復費用がかさんでしまうことがあるでしょう。
そういった場合は原状回復費用を余分に請求することは可能なのでしょうか?
またその場合どのような対応が必要なのか?ペット不可物件でもペットを無断で飼ってしまった入居者の対応は予め決めておいた方がいいのか?
詳しく解説していきたいと思います。
ペット不可の物件における原状回復の扱い
原状回復については賃貸物件においてトラブルになることが多いです。
国土交通省では『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』というものを定めており、
これに従って、原状回復費用の入居者への請求を考えていきます。
ペット可かペット不可かに限らず、ガイドラインでは以下のことが定められています。
- 通常の利用による損耗や経年劣化は貸主の負担
- 借主(入居者)故意・過失などによる破損や劣化は借主の負担
つまり、借主の故意・過失によって破損または劣化した部分に関しては原状回復費用を請求することができる、というわけですね。
また、ガイドラインにはペットの飼育に関しての扱いも以下のように記載があります。
賃借人の負担となるもの
1.飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)
ペット不可の物件でペットを飼っていた場合は規約違反となりますから、借主の故意・過失と言い換えることができるでしょう。
キズや臭いなどがペットの飼育によるものである、ということが証明できれば原状回復費用を請求できることになります。
原状回復費用を全額請求することができるのか?
では、規約違反となるわけだから原状回復費用は全額請求することができるのか?というとそうではありません。
ペット不可の物件で内緒でペットを飼っていたから全て故意過失となり、原状回復費用を入居者全額負担とすることができる、という意味ではないのです。
基本的に通常損耗と考えられる部分の原状回復については費用を請求することができません。
例えば「通常であればクロスを張り替えずに次の入居付けを行う予定だった」ところを、ペットを内緒で入居者が飼っていたことによって臭いがついてしまっており、クロスを張り替えざるを得ない状況になってしまった、という場合ならクロスの張り替え費用については請求できると考えて良いでしょう。
クロスに関しては耐用年数が6年と言われていますので、それ以上長く住んでいる入居者からは「耐用年数を超えているから価値が1円になっているだろう、つまり通常損耗の範囲内だ」という意見があがることもありますが、上記のように「耐用年数を超えていても使えたはずのもの」と考えることができれば、請求することも正しいと言えると思います。
耐用年数を超えたもの全ての価値がなくなってしまうと考えると耐用年数超えの物件はどうなってしまうの?となりますから、この考え方は間違いではないでしょう。
あくまで入居者の故意・過失部分の請求ができ、通常損耗の原状回復やお部屋のグレードアップにかかる費用はペットを内緒で飼っていた入居者に請求することはできません。
関連記事:原状回復におけるクロスの張替えについて、オーナーが知っておきたいこと
ペット不可物件でのトラブルを未然に防ぐために
最近はペット需要が年々高まっており、新型コロナウイルスの影響でお家時間も増え、これからさらにペット需要が高まっていくことが予想されます。
しかしそれに対して、ペット可の物件というのはなかなか増えていかず、需要と供給のバランスがマッチしていないのが現状です。
それに伴って、「内緒でペットを飼ってしまう入居者」はこれからも増えていくと考えられるでしょう。
そういったケースを想定して、できればトラブルを防止するためにしっかりと契約書に規約違反時の対応についても記載をしておきたいところです。
例えば「ペットを飼っていた場合は原状回復費用を全額入居者負担とする」というような特約の場合は、入居者に不利な内容になってしまうため無効とされることがあります。
ペットをもし飼っていた場合、クロス張り替え費用が○万円、など具体的な金額を明記した上で特約をつけておくと良いでしょう。
また、ペット可の物件においても、ペット可の物件であればペットが汚してしまったお部屋の部分に関しても通常損耗として考えられてしまうことになりがちなので、クリーニング費用に関しては具体的な金額を明記しておいた方が良いと思います。
管理をお願いする不動産会社とも相談して、内容を決めておくと良いかもしれませんね。
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