不動産投資をしていると、ランニングコストとしてかかってくる費用の中に修繕費があります。
退去があれば原状回復費用がかかりますが、それ以外にも外壁や屋根などで大規模修繕が必要になってくることもありますね。
目安としては、どの部位でも10年〜15年サイクルで大規模修繕が必要になってくると言われています。
今回はこの修繕と節税について、お話ししてみたいと思います。
一括計上できる修繕費、複数年にわって計上する資本的支出
修繕にかかる費用は税務的に問題になりやすい費用で、
- 修繕費
- 資本的支出
のどちらになるのか、ということがしばしば論点になりやすいです。
修繕費になれば必要経費なので一括で経費として計上することができます。
しかし資本的支出となった場合は、資産として計上して、耐用年数にわたって減価償却費として経費とします。
つまり、一括で経費計上できるのが修繕費、複数年にわたって経費計上し続けるのが資産的支出というわけです。
どちらとして判断するかによって、節税にも大きな影響が出てきますよね。
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資本的支出とはどんなもの?
資産の使用期間を延長させたり、資産価値を増加させたりするための支出が資本的支出です。
修繕することによって
- 価値が増加している
- 使用できる期間が延長している
と見なせる修繕費であれば、固定資産の資本的支出と判断されるんですね。
ではどのような工事が資本的支出として見なされるかというと、
- 建物に非常階段の設置を行なった
- 建物の用途変更のために工事を行った
もともとマイナスであったものをゼロにするものが修繕で、ゼロだったもにプラスしていくのが資本的支出と考えると良いかもしれません。
ただし、資本的支出の例外として以下のようなもの挙げられます。
・20万円未満のもの。
・おおむね3年以内の周期で支出するもの。
・一つの修理・改良の金額に、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、支出した金額が60万円未満またはその資産の前期末の取得価額の10%以下であるとき。
・(法人の場合)一つの修理、改良の金額に、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、支出した金額の30%の額とその資産の前期末の取得価額の10%の額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする処理を継続して行っている場合の、その修繕費部分。
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修繕費と消耗品費の違い
修繕費と混同しがちなものとしてもう一つ、消耗品費というものがあります。
これは名前の通り消耗品を購入した時に使用する勘定科目ですが、「蛍光灯が切れたので新しい電球に変えた」などの場合、修理とも捉えられますから、修繕費なのか消耗品費なのか迷う、ということもあるでしょう。
考え方としては「10万円未満の短期間で消耗する物品」であれば消耗品費となります。
自分でこういった勘定科目をつけている場合は、この線引きが曖昧になりやすいので、できれば一定基準を自分で設けて、ここまでは消耗品費、ここからは修繕費、という線引きをしっかりとしておいた方が良いと思います。
大規模修繕は経費計上額が少なくなる場合があるので要注意
例えば外壁塗装などの大規模修繕の場合、一時的にかかる金額はとても大きなものになります。
しかしこれは資本的支出となりますので、負担額が多いのに、その年に経費として計上することができる金額は少ないんですね。
そうすると思ったほど節税効果が得られない、というようなこともあります。
一括で経費計上できるものなのか、資本的支出となり複数年にわたって経費計上するのものなのか、ということをあらかじめ理解した上で修繕するかどうかも検討した方が良いでしょう。
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節税を行うために使えそうな例外
資本的支出に当たる工事でも20万円未満の場合は金額によっては一括、または3年で均等に割った金額を修繕費として計上することができる「一括償却資産特例」というものがあります。
さらに青色申告をしている場合、1件30万円未満の工事であれば「少額減価償却資産」として経費計上できる特例もあります。
以下に、ここまで話した修繕費と資本的支出の違いとともに、内容を整理しました。
修繕費 | ・原状回復 ・20万円以下 ・3年以内の周期 | 一括経費計上可能 |
資本的支出 | 使用可能期間を延長したり、価値を高めるための支出 | 耐用年数に応じて複数年にわたり、分割して経費計上していく |
一括償却資産特例 | ・10万円未満の工事 ・10万円以上20万円未満の工事 | 一括または3年で均等に割った金額を経費計上可能 |
少額減価償却資産 | 1件30万円未満の工事を合計年間300万円まで | 青色申告者であれば可能 |
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修繕を行う時は一括で全て行うよりも、時期をずらして修繕する方が節税効果が高くなる場合があります。
どれくらいの修繕費用がかかって、一期でいくらくらい計上できるのか、ということをある程度考えて修繕するかどうかを考えられると良いでしょう。