賃貸物件では、大家さんの意向によって家賃を値上げする、ということがありますよね。
どのようなタイミングで値上げになるのか、
また、どういう条件なら値上げが妥当なのか、というところは借主も貸主も気になるところだと思います。
今回は賃貸物件の家賃の値上げについて書いていきたいと思います。日本では一般的ではない、と思われている家賃の値上げですが、妥当な場合もあるのです。
家賃値上げが妥当と見なされる条件
賃貸物件を貸している時、大家さんは入居者が住んでいる間でも値上げをすることができます。
賃貸借契約書に特に取り決めがない場合でも、大家さんは借主に相談なく家賃を値上げできるので
例えば、来月から突然家賃を値上げする、という通知がきた、ということもあり得ます。日本は借り手市場ですが、ニューヨーク等の「物件が不足している都市」おいては、
月に数十ドルの値上げは当たり前だったりします。
ただ、日本においては借地借家法にて、家賃の増額または減額請求ができる条件というものが決められています。
- 土地または建物に対する租税等の増減により土地及び建物の価格が変動して現在の賃料が不相当となった場合
- 経済事情の変動により現在の賃料が不相当となった場合
- 周辺の類似物件の賃料と比較して不相当となった場合
(ただし、特約などで「一定の期間については賃料の増額はしない」などとされている場合には、その内容に従う)
借地借家法(第32条1項)
この条件に当てはまる場合は、大家さんは家賃の値上げをすることができます。
関連記事:不動産売買、見積書は複数業者からもらおう!見るべきポイントとは?
借主が家賃値上げに納得できない場合
上記の条件をクリアしていれば、大家さんは家賃を賃上げすることができます。
もちろん逆を言えば、上記の条件をクリアしていない場合は不当な値上げになりますので、借主が家賃の値上げに対して交渉をする余地が残されていると言えるでしょう。
場合によっては
大家さんが「値上げした賃料でなければ受け取らない」と言うこともあります。
そういった場合は、家賃を滞納するのではなく、法務局に行って供託しましょう。
供託(きょうたく)とは、提供寄託の意味で、法令の規定により、金銭、有価証券、その他の物件(供託物)を供託所(法務局、地方法務局等)その他の者に寄託すること。
Wikipediaより
払うべき家賃を払わずに家賃を滞納してしまうと債務不履行と見なされて、全面的に借主が不利になってしまいます。
- 家賃の値上げに納得できない
- 貸主と借主の間で話し合っても、解決することができない
という場合は供託、という形にするのが一番良いと思います。
供託することで、値上げ前の家賃を払い続ければ、借主は家賃をきちんと払っている、と見なされますので
貸主と対等に話し合うことができます。
関連記事:不動産投資において家賃滞納リスクを回避するためには
家賃の値上げ例
では実際に、貸主がどのようなタイミングで家賃の値上げをするのか、その例を紹介してみたいと思います。
消費税増税と共に値上げ
頻繁にあることではありませんが、消費税が増税になるタイミングで、家賃の値上げをする、という貸主がいました。
納得感があると言えば納得感のある理由ですね。
世間的な風潮として、全体的に今まで思っていた料金よりも物の値段が上がる、というような意識があるタイミングなので、これは「家賃を値上げしたい」と思っている場合は良いタイミングなのではないかなと思います。
居住用住居は消費税が課税されないことになっているんですけどね。駐車場を借りてもらっている場合は関係あるのですが、基本的には関係がないはず。
しかし、消費税増税を「好機」と捉えて、値上げするのも手段の1つです。
- 1989年 消費税3%(竹下内閣)
- 1994年 消費税4%(村山内閣)
- 1997年 消費税5%(橋本内閣)
- 2014年 消費税8%(安倍内閣)
- 2019年 消費税10%(安倍内閣)
このように上がっているので、次のチャンスは2019年ですね。日経平均が過去最高値である「38,957円」をつけた1989年から始まったバブル期の消費税増税。
今は景気が悪い時の増税。そのため、今回の消費増税で家賃の値上げは前回よりも難しいかもしれません。
土地開発と共に値上げ
家賃の値上げをする正当な条件として「周辺の類似物件の賃料と比較して不相当となった場合」というものがあります。
例えば、賃貸物件の周辺が土地開発によってタワーマンションばかりになった、だとか
新しくお店がたくさん増えて、人気のエリアになった、だとか、そういった変化がある場合は値上げとしては良いタイミングなのではないかな、と思います。
勝どきや豊洲等の湾岸エリアや、武蔵小杉等はタワーマンションが乱立している地域。人口も増え、それと同時に商業施設が増えてくる。
家賃を値上げする投資家も多いのではないでしょうか。
内装と共に値上げ
水回り(トイレ、バス、キッチン)をいっぺんに新しくリフォームする時に、それに伴って家賃の値上げをする、という例もありました。
居住者に「こういった内容のリフォームをすることで月の家賃をいくらいくらあげようと思いますが、どうでしょうか?」というアンケートを取り、
同意した居住者の部屋のリフォームをして、毎月の家賃を少しだけ値上げする、という感じです。
先にアンケートをとって、それに同意した借主のみにリフォームを行い、家賃を値上げすることによって、
クレームになりにくく、良い導線を作ることができた例なのではないかなと思います。
家賃が値上げしても、借主側にもメリットに感じる部分がある、というのは良いですよね。
双方がきちんと納得した上で家賃が値上げになっている、というがポイントです。
関連記事:不動産投資において団信に入る意味とは?生命保険代わりになる?
トラブルの起きやすい値上げ
今現在、居住者がいる物件に関して、家賃の値上げを行う、ということはあまりよくあることではありません。
どうしてもそうせざるを得ない場合は、借主にもしっかりと納得してもらえるような流れで値上げができないか、貸主は綿密に考える必要性があると言えるでしょう。
弊社所有物件においても、値上げを実施した例は今のところありません。ファンドが所有するテナント系の物件は毎年値上げをしていたりするんですけどね。
一般の投資家は基本的には値上げをしないことが多いです。
トラブルをなるべく避けたいのであれば、借主との契約が満了となり、退去が済んだ後に、新しい居住者を募集をする段階で、
今までの家賃よりも値段をあげる、というパターンをとった方がよいでしょう。クロスの張り替え等の原状復帰に加え、
- キッチンやバスまで変えてみる
- ドアの色を変えてみる
- 外壁を修理
等の方法で値上げをする方が現実的だったりします。