不動産を購入する時に法人で取得した方がいいのか個人で取得した方がいいのかということについて今回はお話してみたいと思います。
持っている不動産の規模が大きくなってくると、法人化を検討する人もいるでしょう。
不動産を法人で購入するとどのようなことが変わってくるのでしょうか?
所得税か法人税か
不動産を個人で購入するか法人で購入するかの一番の違いは税率です。
個人の税率というのは所得税率になります。
所得が多ければ多いほど税率が高くなり最高税率は50%になります。
個人の税率(所得税率+住民税率)
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
0~195万円 | 15% | 0円 |
195万円~330万円 | 20% | 97,500円 |
330万円~695万円 | 30% | 427,500円 |
695万円~900万円 | 33% | 636,000円 |
900万円~1,800万円 | 43% | 1,536,000円 |
1,800万円~ | 50% | 2,796,000円 |
それに対して法人の税率であれば最高税率が約36%になります。
法人の税率(法人税率+住民税率+事業税率)
利益 | 税率 |
0~400万円 | 約22% |
400万円~800万円 | 約23% |
800万円~ | 約36% |
それぞれのケースによって細い計算が変わってくるので所得がいくらになったら法人化すれば良いと言うボーダーを決めるのは難しいのですが、
ある程度所得が高くなってくれば法人税の方が税率が安くなるということですね。
個人の場合で会社勤めで給与所得を得ている場合は不動産所得と給与所得は合算されることになります。
不動産の収益が高くなってもそれだけ一緒に税率も上がってしまうので、規模が大きくなってきたら法人化した方が節税できると言えるでしょう。
不動産売却時の違い
不動産を売却する時にかかってくる譲渡所得に関しても個人と法人では大きく異なります。
個人の場合は不動産を所有している期間が5年以下の場合は短期譲渡所得がかかり税率は約40%となります。
5年を超えている場合は長期譲渡所得になるので税率が20%。
どちらも譲渡所得として独立して計算されるので所得が赤字であっても合算することはできません。
法人においては譲渡所得も不動産所得も全ての利益で所得税を考えることができるので、その年の利益に応じて調整をすることができます。
関連記事:不動産を売却した時の税金!どんなものがどれくらいかかるの?
減価償却費の違い
不動産は購入した時に建物部分の金額を耐用年数で按分して経費計上することができる費用を減価償却費と言います。
個人の場合は強制償却と言って毎年必ず決められた額を経費として計上しなくてはいけません。
しかし法人の場合は任意償却となるので決められた額の範囲内で償却額を任意で決めることができます。
利益がたくさん出てしまった年に決められた範囲内で減価償却額を使えばなるべく利益を抑えることができますし、逆にあまり利益が出なかった年は減価償却費も少なくすることで調節することができるのです。
関連記事:減価償却は耐用年数を超えた場合でもできる!その計算方法は?
役員報酬
個人の場合は不動産所得は全て個人所得になってしまいます。
青色事業専従者給与といった制度を使って所得税率の低い人に給与として振り分けると言ったこともできますが、これだと様々な制約があります。
それに対して法人で不動産を取得していれば、不動産所得を役員報酬という形で分散させることができるのです。
たとえば所得の低い家族を自分の法人の社員にし、給与として役員報酬を支払うことで納税額を低く抑えることができます。
保険・経費の節税
法人で加入することができる保険を利用して節税をするという方法もあります。
例えば中小企業の倒産などを防ぐ倒産防止共済。
これは掛け金を経費計上することができるので利益を積み立てることで節税することが可能となっています。
他にも小規模企業共済なども使うことができます。
また個人では経費として計上することができないものも、法人であれば経費として計上することができ、全ての事業の利益と損金を通算することができます。
経費計上できるものとしては、
- 管理費
- 修繕積立日
- 修繕費
- 損害保険料
- 租税公課
- 借入利子
- 減価償却費
- 不動産経営において生じた交通費や手数料など
があげられます。
ある程度規模が大きくなってきたら法人の方が節税しやすいという意味で、法人で不動産を購入するメリットが大きいでしょう。
関連記事:不動産投資で得た収入の確定申告、経費にできるものはどんなもの?
不動産は法人で取得するデメリット
不動産を売却する時に譲渡税がかかるというお話をしました。
個人の場合は5年以上不動産を保有している場合税率が約20%になります。
それに対して法人の場合は保有期間の長短に関係なく最高税率で約35%となってしまうので、もし長期で不動産を保有するのであれば個人で購入した方が売却時の税金が安くなる場合があります。
物件によって法人で取得するか個人で取得するかということを変えるのも良いかもしれませんね。