不動産管理

2020年4月の民法改正において見直すべき賃貸借契約のチェックポイント

2020年4月より民法の改正法案が施行され、賃貸借契約にも大きな影響を与えます。

大きく変わる部分として注目したいのが

  • 敷金
  • 修繕義務
  • 原状回復
  • 連帯保証

といった項目になります。

 

オーナーは必ず確認しておいた方が良いポイントですので、解説していきたいと思います。

 

これまで結んできた契約は適用されない

 

まず、今賃貸経営をしているオーナーが気になるポイントとしては、「今すでに結んでしまっている賃貸借契約はどうしたらいいのか」という部分だと思います。

 

すでに締結した契約に関しては契約締結時点での民法が適用されるので、改正民法が新たに施行されても、それ以前に結ばれた契約に関しては原則としては影響しません。

 

つまり民法改正によって気をつけなければいけないのは、2020年4月以降に新規で結ばれる契約についてになります。

 

ただ例外として、改正民法施行日前の賃貸借契約についても、改正民法施行日以降に契約が合意の上更新される場合は、「賃貸借の期間を50年間まで」とする改正民法604条2項の規定が適用されることになりました。

この「賃貸借の期間を50年間まで」とする部分のみ、契約更新の時に適用される形になります。

賃貸借契約が50年以上になることはなかなかないでしょうし、収益物件として物件を持っている場合は50年以上物件を持っているケースもなかなか少ないと思うので、そこまで気にすることではないかと思います。

 

またもう一つの例外として、不動産が不正占有されたような場合に利用できる妨害排除請求権は、改正民法において貸借人も行使できるようになります。

この貸借人による妨害排除請求権は、改正民法施行日前に賃貸借契約が締結された場合であっても適用されることになっています。

とはいえこれも特殊なケースではありますので、トラブルのない賃貸借契約であれば気にする必要はないでしょう。

関連記事:賃貸物件の契約更新方法は3種類!オーナーはどれを選ぶべき?

 

賃貸借契約における民法改正での変更点

 

では民法改正で、賃貸借契約のどんな部分が変わるのか、ということを具体的に解説していきたいと思います。

 

敷金ルールの明確化

 

敷金は賃貸していたお部屋を入居者が退去する際に原状回復工事や滞納がある場合にあてられる費用として入居時に預かるお金ですが、

敷金学から未払い債務残額を引いて返還をする、というルールが明確化されました。

以前よりもより明確化されただけであり、特に実務上大きな変更があるわけではありません。

 

原状回復ルールの明確化

 

民法改正により、貸借人は通常損耗については原状回復義務を負わないことが明記されました。

通常損耗は通常のしようによって生じた傷みや経年劣化です。

 

これも実務上で大きく変わる部分ではなく、今まで載っていなかったけれど実務上はやっていたことが、判例などをもとに整理されて追加になった、という認識で大丈夫です。

 

賃貸不動産譲渡時のルールの明確化

 

賃貸不動産が譲渡された時に、入居者は旧オーナーから新オーナーへ家賃を払わなくてはいけない、ということが明文化されました。

ただ新オーナーが家賃を受け取るには不動産移転登記が必ず必要になりますので、オーナーチェンジの際は迅速に不動産登記を行いましょう。

関連記事:オーナーチェンジの際に家賃値上げはできるのか?その方法とは?

 

修繕についての義務の明確化

 

今回の民法改正で、オーナーである賃貸人の修繕義務の範囲と、入居者である貸借人の修繕義務の範囲が明確化されました。

一度詳細をしっかり確認しておくことをおすすめします。

 

連帯保証人の責任範囲と限度額の明確化

 

「連帯保証人について極度額の設定が義務付けられた」というのが今回の民法改正での大きなポイントです。

賃貸借契約において、連帯保証人を付ける時は必ず、契約締結時に連帯保証人の責任限度額を定めなければならないことになりました。

この極度額を定めていない連帯保証条項は無効とされますので、改正民法施行後に新しく契約を結ぶ場合は賃貸借契約の内容を変更しておく必要があります。

 

金額は大きければ大きいほどオーナーとしては安心だと思いますが、だいたい1年半の家賃額程度で設定しておけば安心だと思います。

関連記事:不動産投資において、トラブルになりやすい入居者とは

 

設備の一部滅失による賃料減額の厳格化

 

民法改正前は建物の設備や屋根など建物の一部が故障・破損した時、入居者がオーナーに賃料の減額を請求できるようになっています。

これが改正後には、賃料減額についての規定がさらに厳格化され、使用できなくなった部分の割合に応じて、賃料は当然減額される、という形に変更されます。

 

故障や破損を入居者が発見し、それが通知された場合に速やかに対応しないと、当然の権利として家賃が減額になる、という流れに変更になりますので、

故障や破損の発生に対してますます迅速に、誠実に対応することが求められます。

 

雨漏りなど、トラブルが繰り返し起きやすい部位については注意が必要ですね。

関連記事:賃貸物件の雨漏りが理由で退去!引越し費用の負担は?

 

今回の民法改正ではさらに入居者に安心して家を借りられるような内容に変更になるような面が大きいです。

オーナーは民法改正前に管理会社と大きな変更点などをしっかり共有し、確認しておきましょう。

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