最近は高齢者の孤独死が社会問題となっていますが、
物件を所有するオーナーもまた、この問題に直面することがあるでしょう。
多く物件を所有していれば、いつかは必ず起こってしまうことです。
所有しているお部屋で孤独死が起きてしまった場合、
- 持ち物の処分
- 未払い家賃の回収
- 原状回復費用の発生
など、対応しなくてはいけないものは色々…
今回はこのうちの原状回復費用について、解説してきたいと思います。
原状回復費用に関しては亡くなってしまった入居者の連帯保証人に請求が可能となっています。
ただ、連帯保証人に請求できる費用には限度があり、全額請求は難しい場合がほとんどです。
孤独死が起きた時に必要になってくる特殊清掃
お部屋の中で孤独死が起こってしまった時、
発見が遅れれば特殊清掃が必要になります。
どうしても発見が遅れ、時間が経ってしまうと、体液が滲み出て強い臭いが発生したり(これで周囲の住人から気づかれることが多いです)、それがシミになってしまったり、虫が湧いてしまったり…と、通常のお部屋のクリーニングでは追いつかない損耗が発生してしまいます。
そこで特殊清掃と呼ばれる、通常のクリーニングよりも、より内容が特殊なクリーニングを施すわけですね。
もちろん通常のクリーニングよりは費用がかかりますし、
畳や床、壁なども交換することが多いので、まとまった金額がかかってくることがあります。
日本少額短期保険協会が2020年に発表した「第5回孤独死現状レポート」によると、
孤独死の平均清掃費用として原状回復費用に約381,000円、残地物処理費に約220,000円かかる、ということが分かっています。
つまり約60万円の出費が予想される、ということですね。
関連記事:どうなったら事故物件?その定義とは?
原状回復費用の範囲とは?
冒頭で連帯保証人に原状回復費用を請求することができる、と述べましたが、
連帯保証人とは、入居者が家賃を払えなくなった場合に代わりに家賃を保証する義務を負う人のことです。
そして孤独死が起こった場合、入居者本人は亡くなっており、支払い能力がありませんので、本来入居者に請求するべきお金を連帯保証人に請求することができる、ということです。
ここで連帯保証人に請求することができる原状回復費用ですが、以下のようなものが該当します。
- 残置物などを撤去し、明け渡しをするまでにかかる家賃(共益費や管理費も含む)
- 原状回復費用(特殊清掃費・通常かかるはずの原状回復費・残地物撤去費)
- 事故物件化による家賃減収(貸室逸失利益)分の損害賠償
孤独死によって発見が遅れた場合は特殊清掃が必要になりますが、
それによって、そのお部屋は事故物件となってしまいます。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインというものが国土交通省から発表されており、これによると、特殊清掃が必要になるような場合は事故物件であり、告知義務が発生するとされています。
お部屋が事故物件となってしまえば、その分家賃を下げて募集をかけるなどの対応が必要になります。
どうしても事故物件の場合は嫌厭されてしまいがちですから、「告知事項あり」の場合は家賃を下げるくらいしか対応策がないのです。
そこで「本来発生するはずだった家賃収入」がなくなってしまいますので、その分を計算して損害賠償の請求ができる、というわけです。
判例で言うと、家賃の値下げによる差額の約2年分の損害まで連帯保証責任が発生するとしたケース(東京地判平成13年11月29日)がありました。
実際にこれらの費用を回収できるかどうかというのは、連帯保証人にどれだけ支払い能力があるか、というところが大きいです。
全てを回収することができない、ということは往々にしてあることです。
関連記事:家賃滞納のまま退去の入居者…保証会社が立て替えてくれました
極度額以上は請求ができない
2020年4月に民法改正があり、
連帯保証契約の際に極度額の記載が義務付けられました。
極度額とは、連帯保証人になる際に、どれくらいの金額まで代わりに支払えるか、その条件を明示するものになります。
民法改正以降に結ばれた契約に関しては、極度額の記載がない連帯保証契約は無効とされているので注意が必要です。
つまり、連帯保証人が記入した極度額より高額な原状回復費用の請求はできません。
孤独死保険に入っておくと安心
最近では孤独死保険という保険が登場しています。(商品名は各保険会社によって異なります)
この孤独死保険は孤独死発生時にかかってくる
- 遺品の整理費用
- 修理費用(原状回復費用)
- 家賃損失額
を補償してくれる保険で、ものによっては最大で300万円程度が補償されるようになっています。
高齢者が単身で入居を希望する時に、入居者側で保険に入ってもらうように促すのも効果的かもしれませんね。
また、連帯保証人がいても、保証会社を必ず通す、というやり方をするのも良いと思います。
私はどのような方であれ、必ず保証会社を通してもらうようにしています。