不動産相続をする時に、土地と建物の評価額はどのような基準で決まるのでしょうか?
まず相続税というのは、亡くなった人が持っていた財産を亡くなった時点で即換金したらいくらになるか?その金額に対して課税される税のことを指します。
現金や株式であれば、その時の価値は簡単に把握することができますが、不動産は難しいですよね。
上物(家屋部分)は経年劣化によって、年月とともに価値が失われていきますし、土地も「昔は人がたくさんいて人気のエリアだったけど、今は空室が多く、家賃を下げても入居ご決まらない…」みたいなエリアであれば当然価値が下がります。
しかも実際に不動産を売るとは決まっていないのに、「亡くなった時点で売却したらいくらになるか」ということを調べなくてはいけません。
どのようにして、不動産の価値を評価するのでしょうか。
家屋の評価額
家屋の評価額は貸家を除いて、固定資産税評価額が基準となります。
固定資産税評価額とは、固定資産税の課税にあたって市町村が決めている評価額です。
これは市町村の窓口や固定資産税の課税明細書で確認ができるようになっています。
不動産を持っていれば年に一度必ず固定資産税がかかっているはずですので、そちらを確認してみましょう。
家屋の場合は固定資産税評価額がそのまま評価額、ということになります。
土地の評価額
土地の評価額は俗に「一物四価」と言われる価格が存在します。
- 実勢価格…実際の売買取引時に成立する市場価格
- 公示価格…国土交通省がその年の1月1日時点において決める全国の標準地の価格で土地取引の指標となるもの。実勢価格の90%の評価になる
- 路線価…国税庁が発表するその年の1月1日時点における価格。相続税、贈与税計算の際に評価額に用いられて、実勢価格の70%〜80%となる
- 固定資産税評価額…市区町村が算定する3年毎の1月1日時点における価格。固定資産税、不動産取得税等の算定に利用されます。実勢価格の60%〜70%となる
これらをもとに、
- 路線化方式
- 倍率方式
の二つの方法で計算します。
路線化方式
路線化に地積をかけて土地の評価額を算出します。
ただ、路線化は整形地で間口が十分に取れている等の優良な土地を想定しており、実際の土地とは照らし合わせが難しい場合があります。
各々の土地の地形や接道状況、用途地域、周辺環境、利用状況などを加味する必要があります。
路線化は国税庁のHPで確認することができます。
倍率方式
路線化が振られていない地域は固定資産税評価額にその地域毎の倍率をかけて土地の評価額を算定します。
評価倍率表に「1.1」や「1.2」などといったエリアごとの倍率がかかれていますので、これをかけて算出する形です。
評価倍率表は路線価同様国税庁のHPで確認することができます。
差額補正
路線価方式の説明の部分で触れましたが、土地はその土地ごとに使い勝手が異なるので、差額を補正して考える必要があります。
どのようなケースにどのような補正がされるのか、紹介していきたいと思います。
不整形地補正
土地の形がいびつな場合、いびつな部分の割合に応じて土地の評価額を下げるのが不整形地補正です。
土地の形がいびつな部分の割合、のことをかげ地割合と呼びます。
かげ地割合は以下の計算式で求めることができます。
かげ地割合 = 想定整形地の地積-不整形地の地積÷想定整形地の割合
間口狭小補正
土地の間口が狭い土地の場合、通常の評価額より減額する補正をおこないます。
この掛け率は国税庁の間口狭小補正率表で確認することができます。
奥行長大補正
間口の長さに対して奥行の長さが大きい場合補正をおこないます。
こちらも奥行長大補正率表が国税庁の方で掲示されています。
ここまで紹介している
- 不整形補正
- 間口矯正補正
- 奥行長大補正
などの補正から、当てはまるもの全ての補正率を路線価にかけて評価額を計算していきます。
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利用状況によっても計算方法が変わる
借地にしている場合や賃貸パート、賃貸マンションで部屋を貸している場合も評価額が変わります。
借地
- 土地を人に貸している場合
- 土地を借りた人が土地の上に建物を建てている場合
などは、通常の土地よりも利用制限がつくので土地の評価額が低くなります。
その場合は以下の計算式で評価額を求めます。
借地権の評価=土地の評価額×借地権割合
借地権割合は各路線価の右隣に表示しているA〜Gの記号に対応しています。
貸家建付地(賃貸アパート・マンション)
賃貸アパートや賃貸マンションの場合は自分の土地として完全に利用することができないので評価額が減額になります。
こちらは以下の計算式で評価額を求めることができます。
貸家建付地の評価=土地の評価額-(土地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
利用の仕方もさまざまですので、その状況に応じて路線価が変わってきます。
自分で調べるのには限界があるかと思いますので、相続税専門の税理士にお願いするのが一番良いでしょう。
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