最近は単身の高齢者が賃貸物件に住んでいて孤独死してしまう、という事例が非常に多くなっています。
東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成30年には3,882人となっており、約10年で2倍になっているんですね。
オーナーにとっての心配事はやはり、
オーナー
所有している物件で孤独死が発生した場合、その物件は事故物件扱いになってしまうのか?
というところなのではないでしょうか。
今回は孤独死が発生した物件が事故物件扱いになるのか、そのボーダーラインはどこなのか、ということを解説してみたいと思います。
実は孤独死のあった家でも事故物件になる物件と、そうではない物件があります。
長く発見されなかった場合は事故物件になる
孤独死があっても、すぐに発見されれば事故物件にならない場合が多いです。
ですが、なかなか発見されず、長い間放置されてしまった場合は事故物件になってしまいます。
長く放置されてしまうと体液が畳やフローリングなどに染み込んでしまってシミができてしまったり、臭いがついてしまったりして、通常のクリーニングでは追いつかず、特殊清掃と呼ばれるクリーニングが必要になります。
もちろん通常のクリーニングよりは高くなりますし、場合によっては大きなリフォームが必要になることもあるでしょう。
この特殊清掃が発生するような場合は事故物件となります。
厳密には事故物件になるかどうかの基準は、
心理的瑕疵(しんりてきかし)が生まれるかどうか、というところです。
心理的瑕疵というのは、その物件に新たに住む人やその物件を購入する人が孤独死のことを知って「嫌だな…」と感じることで、
非常に曖昧なボーダーラインにはなってしまうのですが、人が嫌な気持ちになるくらいの過去があると、事故物件になる、ということになっています。
心理的瑕疵にはたとえば以下のようなものがあります。
- 物件の中で人の死に関わる事件・事故が起きた
- 物件周辺で事件・事故・火災などがあった
- 物件周辺に墓地・宗教団体の施設・指定暴力団の事務所などの嫌悪施設がある
これらの心理的瑕疵がある場合、売主は買主に対して必ずこういったことがあったということを伝える義務があります。これが告知義務ですね。
関連記事:自然死に告知義務はありません!告知されている物件はどういう意味?
事故物件の一般的な基準
人が亡くなった物件全てを事故物件にしていたらキリがないですが、
中には「人が亡くなった部屋でも全然平気!」という方もいれば、「人が亡くなったお部屋なんて絶対に住みたくない!」という方もいるでしょう。
私はお化け系は本当に苦手なので、人が亡くなったお部屋は極力避けたいです…笑
人によって感じ方が違うという曖昧さを回避するために、
国土交通省は2021年に一般的な基準として宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインというものを発表しています。
判断に困った時はこれを参考にするとともに、管理会社さんとも相談してみると良いと思います。
物件に汚れや臭いなどが残ってしまい、特殊清掃が入った場合は、事故物件と判断した方が良いでしょう。
逆に発見が少し遅れてしまった場合でも、汚れや臭いなどが残っていなければ、告知義務は発生しないという認識でいて良いと思います。
関連記事:事故物件の定義は?国土交通省のガイドラインをざっくり解説
事故物件は家賃を下げた方がいい?
一般的には事故物件となってしまい、室内で人が亡くなった場合は家賃を減額する対象になりますが、
老衰や病死・不慮の事故による死の場合は、生活していれば当然起こり得ることで、毎日どこかしらで発生しているものと考えられます。
そのため、
- 自然死
- 事故死
による孤独死は、基本的には心理的瑕疵には該当せず、家賃を減額する必要もないと考えられています。
とはいえ、強い臭いが残っていたりお部屋が汚れていたりする場合は相応に家賃を下げないと借り手が見つからない、という事態にもなり得るでしょう。
どれくらい家賃を減額するか、というところが難しいところですが、
事件性のない孤独死の場合は減額するとしても1割〜2割程度。
都心で賃貸需要が高いところなのであれば減額しない、というオーナーさんもいらっしゃいます。
管理会社さんと相談しながら、周りの物件はどうしているか、聞いてみてもいいかもしれませんね。
関連記事:不動産オーナーの管理会社との付き合い方
事故物件を好んで探す人もいる
最近では事故物件専門の客付け会社があったり、
事故物件だったら安いから、全然気にならないし、むしろ事故物件に住みたい!
という方までいらっしゃるそうです。
事故物件がどういうものなのか、そして事故物件だとちょっと安く住める(買える)ということが一般的にも浸透した証ですね。
こういった層もいるので、事故物件になってしまっても需要がゼロになるということではないということをぜひ覚えておいてください。
これから高齢者の単身入居はさらに増えていくでしょうから、孤独死もどんどん増えて行くと思います。
最近では孤独死保険と呼ばれる保険も出てきており、入居者に負担してもらう保険もあるので、高齢者の入居受け入れを行う場合は、こういったものを検討してみてもいいかもしれませんね。