不動産投資を行っている方は投資を行うにあたってどのような保険に入っておくかということを必ず悩まれると思います。
あまり知名度は高くありませんが施設賠償責任保険と呼ばれる保険があり、不動産を持つ場合は検討するべき保険だと思います。
今回はこの施設賠償責任保険という保険がどのような保険なのか改めて定義し、台風被害など自然災害における被害でも適用することができるのかということを解説していきたいと思います。
施設賠償責任保険とは
施設賠償責任保険というのは建物や施設の管理状況に不備(瑕疵)があった場合に発生した事故を補償する保険です。
例えば以下のようなケースで保険金が支払われます。
- 建物の外壁が剥がれて落下してしまって下に停めてあった車両にぶつかり車両を傷つけてしまった
- マンションの共用部の床が剥がれていてそこにつまずいた入居者が怪我をしてしまった
- 滑りやすい素材が使われている共用部の床で入居者が滑って骨折してしまった
- 家の瓦が落ちて通行人に怪我をさせてしまった
など。
施設賠償責任保険は法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害に対して保険金が支払われます。
どのような損害金に対して保険が支払われるのかというと以下のようなものです。
- 損害賠償金(法律上支払い義務が生じたもの)
- 訴訟費用
- 争訟費用(弁護士費用など)
- 損害防止費用
- 緊急措置費用(事故発生時の応急手当や誤送などに必要になったもの)
- 協力費用(保険会社の要求などに被保険者が応じた時に生じた費用)
など。
損害賠償金だけではなく、権利を守るためや訴訟などにまつわる費用の補償を受けることができます。
施設賠償責任保険の対象は他人なので、入居者だけでなく、通行人なども対象となります。
補償範囲の広い保険だと言えるでしょう。
ただしこの施設賠償責任保険は損害賠償が発生したときの補償に特化した保険です。
損害賠償責任を問われない内容の場合は保険が適用外になりますので注意が必要です。
関連記事:不動産にかけられる保険の種類について解説
賠償保険における自然災害の扱い
損害賠償責任を問われない内容の代表として言えるのが自然災害です。
自然災害というのは予見の可能性が極めて限定されており、回避するのは不可能であるものとして扱われています。
回避することが不可能なものによって建物が損壊し、その損壊が原因となって第三者に損害を与えてしまった場合法律上の賠償責任は生じないとされるわけです。
施設賠償責任保険は法律上の損害賠償責任が発生した時に補償金が出る保険ですから、そもそも法律上の損害賠償責任が発生しない場合は施設賠償責任保険も適用外ということになるわけです。
自然災害は不可抗力であり台風などは予見することができず、回避することはほぼ不可能。
そのため賠償責任は発生しないので施設賠償責任保険も支払われない、ということですね。
関連記事:不動産投資をするオーナーが台風の時にできるリスク回避方法
台風で瓦が飛んでいき、他人を怪我させた場合
例えば台風で瓦が飛んでいてしまいその代わりによって他人を怪我させてしまった場合。
先ほどお話しした施設賠償責任保険における自然災害の扱いの話で言うと損害賠償責任が発生しないので保険金は支払われないということになります。
しかしもし瓦が落ちた原因が自然災害ではなく、建物の維持管理に落ち度があるとされた場合。
こういった場合は損害賠償責任を問われることがありますので施設賠償責任保険を使うことができる可能性もあります。
何十年も修繕をしてこなかったことにより「落ちそうだな」とわかっていたのに瓦を放置していたというような場合。
修繕をしなかったから事故が起こってしまった、となれば損害賠償を免れることはできません。
とはいえ築年数や住宅の性能などによって「落ち度があるかどうか」の判断は異なりますので実務ベースでお話すると本当にケースバイケースというような形になっています。
建物の管理をしっかりとしていたのに自然災害によって建物の一部が損壊し他人に損害を負わせてしまったという場合であれば、そもそも損害賠償が問われないので施設賠償責任保険も適用外となりますが、日々の建物の維持管理に欠陥があった場合はその限りではないということです。
実際維持管理に重大な落ち度があった上で、台風による建物の損壊で賠償責任が生じてしまった場合、施設賠償責任保険の保険金が下りたケースもあります。
損害賠償金が高額になるケースは多いので、施設賠償責任保険は加入がおすすめ
今回のように自然災害が原因となって起きるものに関してはそもそも損害賠償が問われないことが多いので施設賠償責任保険が使えるケースは稀ですが、
一般的に賠償責任が問われるような事態が起きた場合その損害賠償金というのは高額になることが多いです。
その割にアパート一棟やマンション一棟といった規模の不動産でも施設賠償責任保険の保険料は数千円程度で済むものもあります。
比較的安価な保険ですが補償範囲は広い保険になりますので加入しておいても良いのではないかと思います。