賃貸経営をしていると日々様々なトラブルに遭遇することになりますが、
やはり退去時のトラブルはとても多いものです。
その中でも敷金精算時に揉めてしまうケースは少なくありません。
今回は敷金精算時に知っておきたい「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について掘り下げていきたいと思います。
「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は法律ではない
敷金をめぐるトラブルに対応する時、必ず参照しなくてはいけないのが
国土交通省が定めている「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
これはなんなのかというと、
平成11年に旧建設省が初版を発行し二度改定されて、最新のものは平成23年8月に国土交通省から発表された「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という冊子のことです。
入居者が退去する時にお部屋の原状回復を行いますが
どこまでが入居者負担になり、どこまでがオーナーの負担になるのか、というのは非常に曖昧なところでトラブルが起きやすく、
そういったトラブルに対して指標となるように作られたのがこの「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン」なんですね。
ではこの「現状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は法律なのか、というと
法律ではありません。
あくまで指標として使われるものですが、オーナーや不動産会社がこのガイドラインに必ず沿わなくてはいけない、ということではないんですね。
ただ、このガイドラインは実際の裁判所での判例をもとに作られているものですので
何かトラブルがあった際は参考にして対応を進めていくと良いでしょう。
ガイドラインの法的拘束力
ガイドラインは法律ではないので、もちろん法的拘束力はありません。
しかし、裁判の判例をもとに作られている指標なので、
裁判が起きた時はガイドラインを参考にして判決が下されます。
なので、もし敷金清算の時にトラブルが起きてしまい、
入居者から訴えられる、というようなことが起こってしまった場合は
ガイドラインに沿って裁判が行われるため、不測の事態を想定して根本的に敷金の取り扱いはガイドラインに沿った流れで行うのが一般的なのです。
また、地域ごとに条例や特例によって物件の契約内容が制限されている場合もありますので
どの地域で賃貸経営をするのか、ということに契約内容が左右されることがあります。
賃貸経営をする土地を選ぶ際に、その地域ではどのような条例や特例があるのか、ということも調べておくと良いでしょう。
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敷金清算をしない、という手もある
ちなみに賃貸借契約を結ぶ時に、契約書に特例をつけて敷金の清算をしないようにする、ということもできます。
私も実際そのような賃貸物件に一度住んでみたことがあるのですが
「敷金の清算をしない代わりに常識を超えない範囲でお部屋を使ってもらう場合は追加で原状回復費用を請求しない」
というような内容になっていました。
入居者側の目線からすると「少しでも綺麗に使えば敷金が返ってくるかもしれない」と思う通常の敷金のルールに対して
「まぁ普通に使っていれば追加で原状回復費用を請求されることもないしな」と思たので
こういった内容は結構アリなんじゃないかな、と思ましたね。
オーナー側からすると「綺麗に使ってもらえないリスクがある」やり方でもあるかもしれませんが
それでもこういった内容にすることで敷金清算時のトラブルをある程度排除することができるのでは無いかなと思います。
ちなみに契約内容に特約をつける場合は、以下の条件を満たしている必要があります。
【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
原状回復を巡って争点となるポイント
もし敷金精算時にトラブルが起きてしまい、入居者から訴えられる、というようなことが起きてしまった場合に
裁判で争点となるポイントは以下のような点です。
- 退去後に賃貸人が行った修繕の対象となった損耗が、貸借物の通常の使用により生ずる損耗を超えるものか否か
- 損耗が通常の使用によって生ずる程度を超えない場合であっても、特約により賃借人が修繕義務・原状回復義務を負うか否か
こういった点が論点になりやすいのだということを認識しておくだけでも
いざトラブルが起きた時に対処がしやすくなるかと思います。
非常に曖昧な部分が多く難しい点ではありませすが、できるならなるべくトラブルにならないよう
話し合いで解決できるようにしたいですね。
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