不動産を賃貸として出す場合、賃貸借契約という契約を入居者と結んでお部屋を貸します。
お部屋を借りる借主は、定められた用法を守って建物を利用しなくてはいけないのですが、
中にはこの用法を守れない入居者というのがいるものです。
つまり用法遵守義務違反ということになりますが、
この用法違反を理由に、賃貸借契約を解除するということも可能です。
ですが、基本的には現行の法律は入居者に相当有利な内容になっており、
「ルールを守れないならさっさと出て行ってもらう」というような簡単な話ではないんですよね。
今回は賃貸借契約の用法違反について、解説してみようと思います。
用法違反、どんなものがある?
定められた用法を守れない入居者、と聞いてもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
具体的にどんな用法違反があるのか、ということをまずはご紹介してみたいと思います。
区分マンションをメンズエステとして使われてしまった
メンズエステと聞くと聞こえは良いですが、
中には性風俗営業を行なっているものあり、貸主に許可を得ず、さらに公安委員会にも届け出ていないとなれば、違法風俗営業、という形になってしまいます。
このメンズエステは居住用マンションで営業されているものも多く、
用法違反というだけにとどまらないで、もしかしたら警察の捜査への対応なども必要になってくるかもしれません。
通報されて摘発、ということになれば、報道なども行われます。
もちろん摘発までいかずとも、夜の時間帯に男性客の出入りが多くなることで、近隣からクレームが発生することもあるでしょうし、
別の部屋から退去が出てしまうこともあるでしょう。
また、以前違法風俗営業が過去に行われていた、ということで心理的瑕疵として告知義務が発生することもあります。
この告知義務を行なっていなかったということで、説明義務違反で損害賠償責任を負った仲介業者もいました。
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学習塾として使用してしまった
契約後に借主が建物の一部屋を使って学習塾を始めた、というケースもありました。
どうしても出入り人数が多くなることによって、建物の利用形態が変わり、劣化が早まるという問題があります。
ただ、こちらのケースは生徒数が少なかったというのと、建物を痛めないように借主が絨毯を敷いて対策をしたこと、
さらにオーナーの中止要請に従って学習塾をやめた、などの経緯もあり、
用法違反には当たらない、借主と貸主の間の信頼関係が破壊されているとは認められない、という判断になりました。
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ペット飼育禁止のお部屋でペットを飼育
ペットの飼育が特約で禁止されている賃貸借契約において、
糞尿の臭いが近隣住民に迷惑になっているということで信頼関係の破壊が認められたケースもあります。
実際に退去者が出てしまうなどの実害があるような場合は、信頼関係の破壊として認められそうです。
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用法違反として賃貸借契約の解除が認められるかの争点
二つの事例について解説しましたが、
一方は用法違反で賃貸借契約の解除が出来ているものの、学習塾のケースでは契約解除には至っていません。
では用法違反として契約解除をするかどうか、というのはどこがポイントになるのか、というと、
用法違反の程度がどれくらい重いか、また借主と貸主の信頼関係が破壊されているかどうか、というところが重要視されます。
メンズエステのケースは用法違反の中でも相当程度が重く、
そもそも法律に反しているというところから、信頼関係も破壊されていると判断されています。
それに対して学習塾のケースにおいては、程度が低く、また借主が用法を改め、学習塾の継続を断念していることから、信頼関係が破壊されるまでには至っていない、
つまり、賃貸借契約を継続することは可能、という判断となりました。
なかなか線引きは難しいですが、
法律に触れない範囲の法要違反なのであれば、勧告を行うだけに止まるケースが多いようです。
信頼関係の破壊にあたるかどうか、ということは客観的に判断できる必要があり、
オーナーや管理会社の自己判断では訴訟を起こしても認められないケースも多いので難しいですね。
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まずは催告が必要
用法違反があった場合でも、まずオーナーは借主に対して違反状態を解消するように求めなくてはいけません。
これを催告と言い、ポスティングや張り紙では「受け取っていない」と主張されることもあることから、内容証明郵便にて催告を行う必要があります。
反社会的勢力にかかわる条項以外では無催告解除は認められていませんので、
一定期間を定めた催告の後に改善されない場合、初めて契約解除が手続きを始めることができます。