アパート経営には様々なスタイルがありますが、中には長期で収益物件を保有しようと思っている方もいると思います。
例えば、土地を持っている地主系の方だと、土地に上物を立てて30年間運用した後に、築30年の物件として売り出す。
こういうビジョンを思い描いている方もたくさんいると思います。
アパート経営のスタイルは人それぞれなので、「長期投資が正解です!」とは言えませんし、「短期投資が正解です」とも言えません。
ただ、アパート経営を長期で考えるのであれば、30年後にどうなっているのか?ということを想定しておく必要があると思っています。
実際に投資した物件の話も絡めて書いていきたいと思います。
30年後に想定するべき変化
賃料の下落
アパート経営も30年もやっていると、賃料は絶対に下落します。新築当初は2LDKで8万円だった部屋が30年後には4万円程度まで下落することもあります。
例えば、地場の工務店で建築した1億円で利回り8%の物件を運用していたとしましょう。する。営業マンの予想では、「賃料下落は6万円程度でしょう」といった感じのレポートが提出されると思います。
しかし、実際には4万円、それ以下になってしまうこともあります。新築時の利回りは8%だった。それが最終的には4%程度まで下落してしまうこともあるのです。
不動産投資、中古と新築はどっちがいい?でも詳しく書いています。
アパート経営は30年後を考えると、今と同じようにいかない。それをきちんと把握するべきです。
物件価格の下落
物件の価格も当然ですが下落します。例えば、利回り10%で1億円の物件を購入したとしましょう。この物件の賃料が半分になってしまい、利回り5%になったとしましょう。
すると、1億円では売却することができません。さらに、築30年も経過していれば、地方物件の場合だと、利回り20%前後で売却することになるでしょう。
すると、物件の価格自体が2500万円になってしまうのです。30年間の間に賃料が入ってくる。
ただ、それと同時に建物の価値も減少していく。これだけはしっかりと覚えておかなければいけません。アパート経営は30年後も想定すると、意外とリスクの高い分野でもあるのです。
その間にどれだけの修繕をするのか?ということにもよりますけどね。よく、ブラックな営業マンが「相続税対策でアパートを建てましょうよ〜」なんて言っていますが、本当にきちんとした運用計画を建てているのか?と不安になることが多いです。
気をつけましょう。
修繕費の上昇
修繕費も上昇していきます。私も築古物件を多数所有しているので、よくわかりますが、修繕費に関しては年々増えていきますね。
不動産投資で築古物件を購入する時に気をつけるべきことでも書いていますが、やはり築年数が経ってくると、自然と修繕費は上昇するものです。
もちろん、修繕のタイミングに関しては、「売却予定だから今は行わない」というスタンスもありえます。
ただ、そうは行っても、1つ1つの部屋の内装に関してはお金がかかってきますし、宅内配管等も劣化していきます。
屋根や外壁なども30年後にはボロボロになっているでしょう。そうすると、必ず1度は大規模な修繕が必要になってきます。
新築の時には何のトラブルもありませんが、20年を超えたあたりで急にトラブルが増えるのが物件です。そこも加味した上で投資をする必要があるのです。
空室率の増加
空室率も増加します。空室率に関しては、「どれくらいまでならローン返済に耐えられるのか?」という視点で考えてみれば良いと思います。
例えば、6戸中4戸が埋まっている状態であれば、返済を続けることができる。この状態であれば、将来的に空室率が増加した場合も耐えることができますよね。
アパート経営を長期で検討しているのであれば、やはり30年後には必ず空室率が上がっています。
上がっていることを想定した上で、それでも運用を続けることができるのか?ということを計算してみましょう。
今はシミュレーションツールもたくさんあります。
広告料の増加
一部の地域では多額の広告料を取られてしまうこともあります。特に北海道の札幌あたりの広告料が多いのは有名な話ですよね。
新築の時には、日本の「新築信仰」があるので、簡単に満室になります。最近では新築も少しだけ厳しくなってきましたが、それでも基本的には新築は満室になります。
さらに広告料もそこまで必要とされません。しかし、30年後になってくると、物件自体の人気がなくなってくるので、広告料が増加してきます。
1ヶ月で十分だった広告料が2ヶ月、3ヶ月と増えていきます。これが長期的に考えれば大きな負担になっていくのです。
特にワンルームで運用している物件なんかだと、2年や2年未満で退去してしまうことも多く、そうなってくると、多額の広告料が毎年2月〜3月の繁忙期にかかってくるのです。
関連記事:アパート経営をする時に知っておきたい地震保険について
新築から20年以上運用してきて思うこと
長期的な空室
新築から20年以上運用してきて、もうすぐ30年になる物件も保有していますが、長期的な空室状態が目立ってきましたね。
本来であれば、6ヶ月もあれば空室が埋まります。しかし、築年数が30年に近づいてくると、1年、2年と空室が続いてしまうことが多々出てきます。
これを想定しておかないと、かなり痛い目にあってしまうと思います。新築時から20年弱くらいまでは順調に経営していくことが多いです。
しかし、そこから20年以上になってくると、細やかなケアとお金の計算が必要になってくるのです。
賃料交渉の増加
30年近く経過してくると、賃料交渉の機会も増加します。例えば、4万円で募集していた物件を35000円にすることになってしまったりとか。
駐車場を5000円で募集していたのに、駐車場込の値段になってしまったりとか。築古物件というのは新築に比べて弱いのは確かです。
そのため、金額で勝負していくしか他の物件に勝つ方法がなくなってしまうのです。
雨漏りによる家賃値下げ交渉が多発!オーナーがするべき対処は?でも書きましたが、賃料交渉というのは日本においては頻繁に起こる事案なのです。
米国やオーストラリアだと、むしろ「賃料を上げます!嫌なら出て行け!」という感じだったりするんですけどね。
弊社が運用している物件においても、賃料交渉が築年数と共に増加しています。30年も経過すれば、それこそ、1000円、2000円程度ではなく、5000円程度の値下げを要求されることもあります。
外国人の増加
外国人が増加してきましたね。弊社で所有している物件では中国やベトナム人が多く入居することが増えています。
私の仕事用のスマートフォンに「ワタシハ」という感じで電話がかかってきたこともあります。
余談でしたね。
とにかく、最近は外国人が増加しています。留学生が多いです。アパート経営をやっていくなら、「30年後は外国人が増えるかもな」と想定し、その上で経営していくことが重要です。
国によっては習慣が違い、部屋の状態が悪くなってしまう場合もあります。管理会社によっては外国人自体を排斥してしまうところも……
そう考えると、付き合う管理会社からしっかりと考える必要がありますね。
管理会社選びで失敗しないために見るべきポイント!で、管理会社の選び方について解説しているので、参考にしてください。
25年〜29年程度で売却すべし
弊社の実績と感覚から考えると、25年から29年程度で売却するのが良いのかな、と思っています。
アパート経営は30年後を想定するべきだ、と言いました。しかし、30年経ってしまうと、「もうこのアパートに旨味がないな」という状態になってしまう可能性もあります。
修繕費が増えて、ランニングコストが全体的に上がります。そのため、やはり30年経過する前に売却してしまうのが良いのかな、と思っています。
特に新築から運用しているような物件の場合であれば、25年〜29年程度で売却しても、利益が出ると思います。
したがって、相場が割合良い時売却するべきなのです。実際に築年数30年近い物件を運用してみて思ったことです。
関連記事:マンションの1室のオーナーはアパート1棟買いとどう違う?
アパート経営で30年後、痛い目に合わないように
アパート経営は30年後を見据えて行うべきです。かぼちゃの馬車事件までは、不動産投資ブームが巻き起こったこともあり、アパートを所有する人が増えたような気がします。
しかし、アパート経営は素人が手を出すには厳しい世界だと考えています。
アパート経営が成功しているのかどうか?ということは、毎月ローンを返済できているのか?ということや、ローンを借りられているのか?ということとは無関係です。
大切なのは売却した時に年率でどれくらいの利回りを叩き出しているのか?ということです。
築30年に満たない場合でも、「これからはマイナスの方が大きくなるな」と判断すれば、そこで売却してみるのも1つの選択肢だと思います。
とにかく、アパート経営というものは30年後を想定して行うものなのです。1年や2年という単位で考えているのであれば、REITや高配当株、ETFを購入した方が良いです。
30年後を常に想定して、投資を実行するべきです。世界では築60年超えの物件にも需要がありますが、日本の場合、30年前後が分岐点になります。
そもそも日本は地震大国であると同時にスクラップアンドビルドの文化が根付いていますからね。
30年後にどれくらいの利益を見込むのか?想定しつつアパート経営をしてみてください。